細胞操作用マイクロマニピュレータの自動化

キーワード:圧電マニピュレータ,マイクロマニピュレーション,マイクロインジェクション,体外受精
Keyword: Piezo Manipulator, Micro Manipulation, Micro Injection, In Vitro Fertilization


はじめに

 近年の哺乳動物における生命工学の研究,また究極的な不妊治療法である卵細胞質内精子注入法においては,細胞レベルでの精密な操作を行う必要がある. 顕微鏡下において,遺伝子,核,受精胚(受精卵)などに物理的操作を加える作業(マイクロマニピュレーション)には,微細作業装置(マイクロマニピュレータ)が用いられる. しかしながら,その操作には非常に繊細でかなりの熟練した技術を要する. そのためその効率は低く,マニピュレーションの失敗の原因となっており,そのような熟練した技術を必要としないマニピュレーションの自動化が望まれている. 本研究では,卵細胞へのインジェクションに適した圧電インパクト駆動機構や,画像処理技術を用いた精密位置決め電動XYステージなどの,メカトロニクス技術を応用したマイクロマニピュレーション自動化装置の研究・開発を行っている.

システム全体像 微細作業部
システム全体像 微細作業部

圧電インパクト駆動機構を用いたマイクロインジェクション

 卵細胞への精子注入やDNA移植(マイクロインジェクション作業)の際,マイクロピペットを細胞質内へ挿入しなければならない. 従来のマイクロマニピュレータでは,細胞膜の弾性によって細胞が変形してしまったり,ひどいときは核などが破壊されてしまう. 本研究では,圧電素子の急速変形を利用した圧電インパクト駆動機構を利用することによって,卵細胞へのスムースなマイクロピペットの挿入を可能にし,実用化に至っている.
圧電インパクト駆動機構を用いたマイクロインジェクション 従来のマイクロマニピュレータによるマイクロインジェクション
圧電インパクト駆動機構を用いた
マイクロインジェクション
Movie 低画質(443KB, QuickTime)
高画質(3.33MB, MPEG)
従来のマイクロマニピュレータによる
マイクロインジェクション
Movie 低画質(603KB, QuickTime)
高画質(3.91MB, MPEG)

画像処理を用いた卵細胞自動検出機構

 シャーレ上のひとつのメディウムドロップの中には数個から数十個の細胞が置かれてある. それらを順番に探し出す作業はオぺレータにとって非常に大きな負担となる. 本研究では,顕微鏡からの画像情報をCCDカメラで取り込み,画像認識自動位置決め装置を介して,電動XYステージを駆動させる装置を開発した.
画像処理画面
画像処理画面

参考文献

[1] 工藤,後藤,佐藤,山形,古谷,樋口:「圧電素子を用いた細胞操作用マイクロマニピュレータの開発」,哺乳卵子動物学会誌,第7巻1号,pp. 7-12 (1990)
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