マイクロチャンネルにおける液中微小液滴の生成

キーワード:マイクロチャンネル, Lab on a Chip, µTAS, マイクロ化学リアクタ, T字路, エマルション, マイクロカプセル, DDS


はじめに

本研究は,マイクロチャンネル中において微小液滴を生成させる手法についての研究である.連続相として油,分散相として水を用い,均一サイズの微小液滴を一定の速度で生成させることができた.生成される液滴のサイズは連続相および分散相の流速を変化させることにより制御可能であり,今回用いた装置では最小で直径100 µm(0.5 nl),最大で直径380 µm(14 nl)の微小液滴を得ることができた.今後応用が見込まれるものとしては,マイクロ化学リアクタのための計量手段,化粧品等のエマルションの生成,マイクロカプセル化による製薬等がある.

マイクロチャンネルの加工

PMMAプレート(40 mm x 40 mm x 40 mm,図1左)表面に,エンドミルを用いた機械加工により液滴生成用マイクロチャンネルを作成した. 主な部分の流路深さは100 µmであり,断面は長方形を成している(図1右).幅に関しては,分散相供給側100 µm,連続相供給側が300-500 µmとなっている.また生成された液滴の観察を行うために,チャンネル終端にリザーバ部が加工されている(図2).なお流路を密封する手法として,粘着テープを用いた.

Fig.1 液滴生成デバイス(左) およびT字部のSEM写真(右)
Fig.2 液滴生成用流路の概念図(T字型)

微小液滴生成実験

 分散相として純水,連続相としてひまわり油(60 mPa・s)を用い,シリンジポンプを用いて送液を行った.また液滴が生成される様子は,顕微鏡および高速度ビデオカメラを用いて観察した.  分散相および連続相の流速を適切に制御してやることにより,合流地点においてW/O(Water-in-Oil)型の微小液滴の生成が観察された.生成される液滴のサイズは,各相の流速を制御することにより変化させることが可能であり(図4),今回用いた装置においては,最小で直径100 µm(0.5 nl),最大で直径380 µm(29 nl)の液滴が得られた.また液滴の生成速度も制御可能であり,図5のような結果が得られた.

Fig.3 液滴生成の様子
Fig.4 連続相の流速と液滴サイズの関係
Fig.5 連続相の流速と液滴生成速度の関係

関連項目


参考文献

[1] Takasi Nisisako, Kenta Fukudome, Toru Torii, Toshiro Higchi, "Nanoliter-sized Droplet Formation in a Microchannel Network", Proceedings of ISMM2001, pp. 102-103 (2001)
戻る
Higuchi Lab.