高温超電導材料を利用した磁気浮上に関する研究
キーワード:磁気浮上,高温超電導体,軟磁性体,ピン止め効果
概要
従来の高温超電導体のピン止め効果を利用した磁気浮上機構では,永久磁石と高温超電導体を必須の構成要素としていた. 制御回路を必要としないこの磁気浮上の仕組みは,永久磁石の磁界をピン止めした高温超電導体が,ピン止めされた磁束分布を維持しようとする性質を有することで説明されている.
何らかの方法で,浮上対象の位置の変化に伴って同様の現象を得ることができれば,永久磁石を用いずとも安定浮上に必要な復元力を発生させることが可能となる. この着想に基づき,ピン止めされた磁束の領域よりも対向面積が狭く,磁束を絞るように先端部を細くした鉄などの軟磁性体を高温超電導体が安定に吸引浮上できるという,全く新しい磁気浮上機構の考案を行なった.基礎実験装置でこの考案の有効性を実証した. 開発した新しい磁気浮上機構では,軌道側に永久磁石を設置する必要がなく,断面がコの字形をした鋼のレールを軌道として用いることができる. 高速列車や非接触搬送装置への利用の可能性をモデル機によって確認した. そして,この浮上機構を荷重方向ではなく,列車の横方向非接触支持に利用することによって,荷重の変動に対処できる方式を開発し,その有効性を実験によって明らかにした.
鉄製のレールを利用できる超電導体による磁気浮上列車モデル
参考文献
[1] 筒井幸雄,樋口俊郎:「高温超電導体と軟磁性体を用いた磁気浮上」,低温工学,Vol. 30,No. 5,pp. 231-236,1995
[2] 筒井幸雄,近藤靖浩,樋口俊郎:「高温超電導体と軟磁性体を組み合わせた磁気浮上機構の改良」,低温工学,Vol. 31,No. 2,pp. 61-65,1996
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Higuchi Lab.