バーチャルリアリティーを用いた
生体3次元情報の観察

キーワード:バーチャルリアリティー,VRML,没入型ディスプレイ,IPT,バイオイメージング,3次元内部構造顕微鏡


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ピーマン マウスの肝臓
ピーマン(395 KB) マウス肝臓(334 KB)
表示には,VRML2.0用のプラグインが必要です. 表示結果は,利用するプラグインによって(大幅に?)異なります.本研究室のおすすめは Cosmo Playerです.他のプラグインでは,きれいに表示されない場合があります.

下の解説も是非とも読んでいってください.

はじめに

 本研究室においては,生体試料や食品試料の内部情報を,高速かつ高精度に取得することのできる3次元内部構造顕微鏡[1]の開発を行っている. 3次元内部構造顕微鏡においては,観察試料を数µm〜数十µmの厚みで順次スライスし,スライスされた試料側断面,もしくはスライスした薄切片を,連続的に観察・撮影することで,生体の内部情報を得ることができる.
 観察に際しては,
  1. 自然光にて観察を行えば,試料内部の色情報[1]
  2. 事前に蛍光染色した上で蛍光観察を行えば,試料内部の特異部[2]
  3. 赤外分光観察を行えば,試料内部の成分分布[3]
といった多様な情報を取得する事が可能である.
 内部構造を観察するための装置としては,CTスキャンやMRIといった非破壊観察装置がよく知られている. これらの装置と比較した場合,3次元内部構造顕微鏡では,試料の破壊を伴いはするものの,より多彩な情報が得られる点が特徴である.
 本研究室では,この3次元内部構造顕微鏡による観察データをもとに,バーチャルリアリティー空間を作成し,それを,
  1. 没入型ディスプレイ(CABIN)を用いて表示することで,観察結果をより効率的かつ直感的に理解できるようにする
  2. VRMLを用いて表現することにより,インターネットを介して広く世界に公開する
ことを目指している. 本ページでは,その試みの一端を紹介する.

ポリゴンデータの作成

 3次元内部構造顕微鏡にて直接得られるデータは,CTスキャンやMRIと同じく,一連の2次元断面画像である. 2次元断面画像の一例を図1に示す. 図1を見てわかるとおり,断面画像を直接観察しても,全体の把握は困難である. そこで,通常,これら一連の断面画像をもとに,3次元立体像を構築し観察を行う.
ピーマン断面画像
図1 3次元内部構造顕微鏡で得られたピーマンの断面画像
(黒い部分は包埋材)

 現在のコンピュータにおける3次元表示技術は,多くの場合,ポリゴン表現されたデータの表示に対して最適化されている. そのため,バーチャルリアリティーのように,高速な表示が必要とされる場合,その3次元データの作成にあたっては,ポリゴンの利用が基本となる.
 ここでは,連続断面画像を,縦,横,枚数とも100〜200ピクセル程度に縮小した上でコンピュータ上に取り込み,それをもとにポリゴンの生成を行っている. さらに,データ量の削減と表示の高速化のためにポリゴンモデルを簡略化し,最終的に数千〜数万ポリゴンのモデルを得ている.

没入型ディスプレイを用いた表示

 作成したポリゴンデータを,東京大学インテリジェントモデリングラボラトリー(IML)に設置された大型三次元画像装置(没入型ディスプレイ):CABINを用いて表示した際の様子を図3に示す.
CABINでの表示 ピーマンの内部
図3 CABINでの表示

 CABINを用いて実現される没入型仮想空間においては,通常の2次元ディスプレイでの表示に比べ,要素の位置関係の認識等において有利であり,観察結果の理解が容易となることが確認できた. また,あたかも生体試料や食品試料の内部に入り込んだかのような感覚を観察者に与えることができるため,観察者は,その感覚を楽しみながら観察を行うことができる(残念ながら,その感覚をホームページ上で紹介することは不可能).

VRML 2.0 による表示

 VRML(Virtual Reality Modeling Language)は,インターネット上(ホームページ上)にて,3次元仮想空間を表現するための言語である. Internet Explorer,Netsape Navigatorといった主なウェブブラウザにおいては,VRMLを表示するためのプラグインソフトが,無償で入手できる. そのため,上記にて作成したポリゴンデータをVRMLの形式で表現することで,3次元内部構造顕微鏡の観察結果を,インターネット上で容易に配布することが可能となる.
 作成したVRMLデータ(VRML 2.0)の一例を次に示す.
ピーマン ピーマン(395 KB)
マウスの肝臓 マウスの肝臓と血管抽出像(334 KB)

これらのデータの表示には,VRML2.0用のプラグインが必要です. 表示結果は,利用するプラグインによって異なります. 本研究室では,Cosmo Playerを利用して,動作確認を行っています. Cosmo Playerは,こちらから入手してください.

 今後は,様々な観察データをVRML化し,広く公開することを目指していきたい.


謝辞

 ポリゴンデータの作成に当たっては,東京大学 工学系研究科 精密機械工学専攻 鈴木宏正助教授理化学研究所 素形材工学研究室 金井崇博士に御助言・御協力をいただきました.ここに感謝の意を表します.

参考文献

[1] 小林,樋口,青木,工藤:三次元内部構造顕微鏡の開発,精密工学会誌,第61巻,第1号,100−106 (1995)
[2] 横田,工藤,樋口,佐藤:発現遺伝子観察用3次元内部構造顕微鏡の開発,医用電子と生体工学,第36巻,第3号,244-251 (1998)
[3] 工藤,田渕,加藤,樋口,神,小久保:生体内部情報の可視化による3次元バイオイメージング手法の開発,農業機械学会第34回関東支部年次報告,33−34 (1998)
[4] 山本,工藤,都,小川,杉山,相良,樋口:3次元バイオイメージングに関する研究,2000年度農業施設学会大会講演要旨,214-215(2000)


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