静電力を利用した非接触浮上機構

キーワード:静電気力,非接触浮上,静電浮上,アルミディスク,シリコンウェハ,ガラス


概要

 真空環境やクリーンルームでは,これらの環境を汚さない機械が求められる. そこで,本研究室では,磁気軸受,超電導浮上,静電浮上等による非接触浮上機構の研究を行なっている.
 静電浮上に関しては,シリコンウエハおよびアルミディスクの非接触吸引浮上に成功した後,エッジ効果を利用したアルミニウムディスクの非接触搬送に成功した.
 8インチのシリコンウエハを対象とする非接触搬送システムの試作を行い,非接触浮上・搬送に成功した. また,絶縁体と見なせるソーダガラスや石英ガラスが,静電力によって,非接触吸引浮上できることを発見した. ガラスが直接,静電力によって吸引浮上できることは予想外のことであった. 薄板ガラスに厚さの異なる導電性薄膜を付け,どの程度の電気伝導度があれば浮上が可能かを調べる実験を進める過程で,導電性薄膜を付けなくとも浮上が可能であることを見いだした. ただし,帯電に時間を要し,制御を開始してから数秒たってから浮上する. そこで,ガラスの帯電を早めるために,対向する電極を分割する方法を考案し,ほとんど瞬時に浮上が出来るようになった. さらに,薄板ガラスに対しては,高抵抗体の駆動に有効である誘導電荷型の静電モータの仕組みを駆動に利用することが出来る. この考えに基づき,ガラス円盤の非接触吸引浮上回転と角板ガラスの非接触浮上搬送に成功した.  液晶等の表示機器に多用される薄板ガラスは,大面積化が進められてきており,ガラスを汚さない非接触ハンドリング技術が求められている. 本研究室で開発した技術の活用が期待できる.
アルミディスクの静電浮上
アルミディスクの非接触静電浮上
下から見上げた写真,浮上ギャップは0.3〜0.5mm程度

関連項目


参考文献

[1] J.Jin, T.Higuchi, M.Kanemoto: "Electrostatic Silicon Wafer Suspension", Proc. 4th Int. Symp. Magnetic Bearings, pp. 343-348, 1994
[2] J.Jin, T.Higuchi, M.Kanemoto: "Electrostatic Levitator for Hard Disk Media", IEEE Trans. Industrial Electronics, Vol. 42, No. 5, pp. 467-473, 1995
[3] Ju Jin,樋口俊郎:「静電浮上リニア駆動機構」,電気学会論文誌E,Vol. 116,No. 1,pp. 28-33,1996
[4] J.U.Jeon, T.Higuchi: "Electrostatic Suspension of Dielectrics", IEEE Trans. Industrial Electronics, Vol. 45, No. 6, pp. 938-946, 1998
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Higuchi Lab.