成膜はPb2+, Zr4+、Ti4+のイオンを含んだ水溶液中で行われる。 この水溶液、およびチタン基板を圧力容器中に入れ、高温高圧の条件におくことによってPZT薄膜を得ることができる。 PZT薄膜中のZr : Tiの比は水溶液中のイオン濃度の比によって制御することができる。
当研究室では単一プロセス水熱合成法[2]を開発した。 既存の方法では二段階の異なる条件のプロセスが必要であった。 同じ条件で二回成膜を繰り返すことにより厚さ10µnmのPZT薄膜を得ることができる。
この方法によって成膜されたPZTの圧電定数d31は-24 pC/Nであった。 この値はバルク材(Zr:Ti = 52:48, d31 = -93.5 pC/N [3])での値の4分の1強である。 同様に圧電定数e31は、0.3 C/m2である。 これはバルク材 (e31 = -3.06 C/m2 [3])の10分の1に過ぎず、d31と比較しても小さすぎる。
当研究室では、この水熱合成法によるPZT薄膜を用いて、マイクロ超音波モータ、形状測定用の振動形プローブセンサ、補聴器用イヤホンの試作を行っている。
[2] T.Morita, T.Kanda, M.Kurosawa, and T.Higuchi: "Single process to deposit lead zirconate titanate (PZT) thin film by a hydrothermal method", Jpn. J. Appl. Phys., Vol.36, No.5B, pp.2998-2999, 1997.
[3] B.Jaffe, W.R.Cook, and H.Jaffe: "Piezoelectric Ceramics", Academic Press, London, 1971.